Nero’s備忘録~育休中パパはじめての子育て~

パパ育休真っ最中。パパ育休の布教活動、子育て日記他、備忘録。

パパ育休はトレードオフ?~その2~

おはようございます。Neroです。

 

 

ありとあらゆる生き物に平等なモノ。時間です。

人間だろうが、ネコだろうが、犬だろうが、カメムシだろうが…。

生物としての寿命は平等ではありませんが、1日24時間というルールは共通。

 

我々人間も同様。1日24時間365日、寿命が尽きるまで。これをどう生きるかは、現代社会の日本に生まれた我々には、有難いことに無数の選択肢があるわけです。

 

 

さてさて、私はパパ育児休業の取得推進派です。私も現在進行形で育児休業取得中。

 

育児休業については、4月から改正された育児・介護休業法が段階を経て施行されていきます。ルールとしての育児休業は、年々よりよいものに変化していっています。

 

その大きな背景の一つが、出生数、並びに合計特殊出生率の低下。いわゆる少子化の進行ですよね。年々低下の一途を辿り、2006年ごろから若干回復したものの、2016年~2020年までの5年間は連続して低下。出生数は右肩下がりです。

www.mhlw.go.jp

 

 

さて、平成16年に内閣府がまとめた資料にこんなものがありました。

平成16年なので今からおおよそ20年前です。

www8.cao.go.jp

 

少子化の原因で下記の3点を挙げています。

・夫婦の出生力低下

・未婚化の進展

・晩婚化の進展

 

2番目、3番目の原因については当記事の趣旨から外れるので割愛いたしますが、1番目の「夫婦の出生力低下」をさらに深堀して要因を探ると、

・育児、教育コストの負担増

・仕事と子育ての両立の負担感

・夫の育児不参加

・妻の精神的、身体的負担の増大

・老後の子ども依存の低下

・出産、子育て機会費用の増大

 

上記が挙げられています。

 

 

さて、この20年でこの要因のうちのどれだけが解消されたのでしょうか。

他2つの原因を完全に無視したうえで、出生数と合計特殊出生率の数字だけを見ると、「解消されていない」との結論にならざるを得ません。

一方で、この4月から始まる改正育児・介護休業法の施行など、万全とは言えないものの、ルールとしての整備は徐々に整いつつあります。

 

では、なぜ解消されないのか。

 

私は、個人としても、世の中としても、根本的な価値観が変わっていないから、なんじゃないかと思っています。

 

 

人間誰もが、1日で使える時間は24時間です。

子どもが生まれて、育児をしなければならない人の1日の時間が32時間とかになったりはしません。同じ24時間の中から、今までやっていた何かを止めて、子育てに充てる時間を捻出しなければならない。

 

ではどうやって捻出するか?

 

例えば、私は子どもが生まれる前、ほぼ毎日、平均すると4時間程の残業をしていました。

今まで毎日4時間残業しなければ業務が回らなかったものが、ある日突然、その業務が消えてなくなる訳がありません。

時間を短縮しながら、なおかつ個人の業務量を変えずに個人ができることもあるとは思います。生産性をより上げる、スキルを上げる。でもその日はいつ訪れるのでしょうか。

ある日突然、の「ある日」とは子どもが生まれたその日です。その日から待ったなしで育児がスタートします。時間が捻出できるようになるのは今日でしょうか、明日でしょうか。通常これには時間がかかるはずです。

 

 

4時間分の業務をあきらめる、あるいは他の方に助けを求める、等、組織全体の助けが必要なはずです。

ですが、通常組織は主体的にこの手助けはしません。

私も経験しましたが、「子どもが生まれました!」と会社に報告をすると、上司は「おめでとう!家族を大事にしてやれよ!」と言ってくれました。

ただし、上司(組織)の側から、業務量を調整するなどの配慮は通常あり得ません*1

なぜならば上司、組織は限られた人的コストの中から、最大限の成果を上げることがミッションだからです。

 

 

であれば、個人の側から調整をかけていくしか方法がありません。

でも、個人の側も今まで仕事を第一優先していた価値観から、いきなり子育てを第一優先する価値観へスライドするには、大きな意識改革が要ります

 

 

実務としての子育てを実行するために育児休業を取るわけですが、それだけでなく、個人が、組織が、「根本的な価値観を変えるための、大きな意識改革」をするためにも必要な時間が、「育児休業」だと思います

 

 

私の場合、半ば無理やり育児休業を取得。会社にもたくさん迷惑を掛けました。

でも、育児休業を取らずにそのまま仕事をしていたら、価値観そのものも変わっていなかったかもしれません。価値観が変わらなければ、通常業務の中での時間調整など、育児に充てる時間を捻出する行為も、後回しになっている可能性は高かったです。

 

 

家族によっては今までの価値観を変えない、という選択肢もあり得るかもしれません。

ママがワンオペを頑張る、おじいちゃんおばあちゃんの力を借りる。近所の力を借りる。

そしてパパは会社で頑張って働き、役職を上げて給料を上げる。

多くの前世代の方々がそうしてきたように。

 

価値観を変えないことを否定はできませんが、その結果がいまの日本の出生数、合計特殊出生率の数値として表れている気がしてなりません。悲しい事件も日々起きています。

 

 

育児休業については、ルールはある程度整ってきました。あとはそのルールがあるにもかかわらず、「見えない圧力」や「同調圧力」などの「育児休業が取れない空気感」をどうやって打破できるか、というところな気がします。

それらを打破していくにはリスクが伴います。

日本の組織は「メンバーシップ型」と呼ばれています。メンバーシップ型は、「その組織にいかに尽くしているのか」という姿勢が評価対象となります*2育児休業という選択は、まだまだ「組織に尽くしている態度」とは真逆の行動です。

一つの組織で評価を上げて上を目指そうという方にとって、育児休業を取るということは、個人としてはそういったリスクが高いのが現状だとは思います。

 

 

会社の評価と子育てはまだまだトレードオフ同じ24時間しかない中で、時間的にもエネルギー的にも、これまでと同じ働き方のままで、育児の時間を確保することは難しいと考えます。

だからこそ、「一つの組織で評価を上げて上を目指す」ことが、本当に自身の価値観にとって大切なことなのか。子どもが生まれたという大きな環境変化に伴い、必ず見直すべきことです。

 

 

育児を選択したい方々(平成16年の資料で「夫婦の出生力低下」に該当する方々)にとって、

育児休業を経て価値観を変えた人々が、より多く社会の中にいれば、おのずと、それがあたりまえの社会に変わっていくのではないかな~、と思ったりしております。

*1:2022年4月から雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化がスタート。組織が変化するといいですね…

*2:ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書) | 濱口 桂一郎 |